目的と手段の性質

    

 

 一般に、課題や問題として掲げられるものは、その目的がはっきりしていないことがあります。したがって、課題解決や問題解決の最初にやらなければならないことは、その課題や問題の目的をはっきりさせることです。

 先に、課題や問題自体にも階層性があることを確認しましたので、この目的を捉えるにも、目的と手段との関係を解明すればいいことがわかります。そのためには、「何のために?」という問いをすればいいことになります。ただ、その答えは一つでないことも私たちは確認しましたので、たくさん答えを出してみることになります。

 目的と手段は相対的なものです。最上位の目的から見れば、それまで目的と思っていたすべてのものが手段になります。ということは、ここで出したたくさんの答え(目的と思っていた内容)は、それぞれ目的と手段という関係で表現できることになります。出された多くの答えを目的と手段との関係でつないでいくことにより、それらの関係が目に見えるようになります。

 その系統図(これを目的手段系統図といいます。)を見て、解決のための行為を起こすに適当と思われる具体的な表現がなされている答えを選択し、その答えを対象とする課題や問題の本質的な目的として採用することができます。目的手段系統図は、手段が目的に適合しているか否かを確認するためにも使用できます。

 課題や問題の目的が明確になったら、次に、その目的を達成するための最適な手段を考えることになります。その際に、手段としてどのような働きが必要なのかを考えます。この働きを、技術の世界では機能といいます。技術の世界では、モノ、コトの構成要素を機能で捉え、この機能を中心とした構成要素の関係を解明することが行われます。この場合には、機能系統図を作成することになります。

 ちなみに、機能も目的と手段との関係と同じように連鎖、階層性を有することになります。つまり、ある構成要素としての技術は、目的とする機能(目的機能)とその目的を達成するための手段としての機能(手段機能)との一組で表現され、これら構成要素としての技術が複雑に関係し合う(連鎖し階層構造を作る)ことで、上位の技術が完成されます。つまり、働きの側面から見たのが「機能」であり、人間の意図の側面から見たのが「目的・手段」という表現であり、内容的には同じことです (「目的発想法」、村上哲大著、都市文化社発行)。

 目的は、環境によっても変化します。何故ならば、時代によって、人間の好みも変わるし、制約条件も変わるからです。したがって、変化の激しい今の時代では、課題や問題を解決した途端から、新たな課題や問題を抱えることになります。ということは、このような時代にあっては、目的手段系統図または機能系統図を作り続ける必要があるといえます。

 

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